―― 現場を「従わせる」のではなく、「共に創る」仕組みへ
■ なぜ仕組みと現場はぶつかるのか
「せっかく仕組みを作ったのに、現場が動かない」
「ルールを作っても、いつの間にか“現場流”に変えられている」
多くの経営者がこの悩みにぶつかります。
仕組み化の目的は、属人的なやり方を標準化し、再現性を高めること。
しかし、現場の人間からすれば「また上が勝手に決めた」と感じられることが多く、
その瞬間に“仕組みと現場の対立”が始まります。
この摩擦の根っこにあるのは、
「現場は仕組みに従うもの」という無意識の構図です。
■ 現場には“暗黙知”がある
どんな小さな会社にも、現場には膨大な知恵が眠っています。
・顧客のちょっとした表情の変化を読む力
・経験から導き出した作業の勘どころ
・現場でしか気づけないリスク察知
これらは、マニュアルやKPIでは捉えきれない“暗黙知”です。
そして、この暗黙知こそが現場の生命線。
ところが、仕組みを上から押し付けると、この知恵は「無視されている」と感じ、やがて口を閉ざすようになります。
つまり、仕組み化は成功した瞬間に“現場の知恵”を殺す危険を孕むのです。
■ 「現場を巻き込む」とは、“意見を聞く”ことではない
「現場の声を取り入れている」と言う会社もあります。
しかし、その実態はどうでしょうか。
会議で意見を聞くだけで、結局は上層部が決定していませんか?
本当の“巻き込み”とは、現場が「自分たちの仕組みだ」と感じること。
つまり、仕組みを“現場と一緒に設計する”ことです。
現場の人が「これならやりやすい」と言える設計プロセスがあるかどうか。
この一点が、運用の定着率を劇的に変えます。
■ 両立の鍵は「改善の余地を残すこと」
完璧な仕組みほど、すぐに壊れます。
なぜなら、現場は常に変化しているからです。
だからこそ、仕組みは“完成させない”ことが重要。
むしろ、
「ここは現場の判断に委ねていい」
「この部分は定期的に見直す」
という“余白”を残しておくことが、
現場の知恵を活かす余地になります。
つまり、仕組みとは“枠組み”であって、“檻”ではない。
変化を前提にした設計こそ、現場が生きる仕組み化の真髄です。
■ “現場の知恵”を見える化する仕組み
両立の第一歩としておすすめなのが、「現場発の改善提案」を仕組みに組み込むことです。
たとえば:
月1回の“現場改善会議”を仕組みとして運用する
改善提案を評価・共有できる仕組みをつくる
“現場のベストプラクティス”を動画やマニュアルにして残す
こうして、現場が仕組みを“更新する側”になると、仕組みは自然と現場の知恵と共に進化していきます。
■ まとめ:仕組みは「上」ではなく「間」に置け
仕組み化の本質は、「上から現場を管理する」ことではなく、「現場と経営の間に共通の言語を作ること」です。
仕組みが間に立てば、現場は自由に動け、経営は安心して任せられる。
“仕組み”は現場を縛るものではなく、現場を解き放つもの。
この視点を持てるかどうかで、会社の未来は大きく変わります。