― 指示待ち人間を量産する“空気と忖度”の正体 ―
「空気を読んで動け」と言われた社員の本音
中小企業の現場では、「空気を読んで動け」「言われる前にやれ」といった言葉がよく聞かれます。
「状況を見て判断しろ」「相手の気持ちを考えて動け」「上司が忙しそうなら声をかけるな」——。一見、美徳のようにも思えるこうした指導。でも実際の現場では、こうした“配慮”が混乱を招いています。
たとえば、
「上司の機嫌が良さそうだから、今なら話しかけられるかも…」
「あの人は細かいから、先に確認しないと怒られるかも」
「こっちの上司は自由にやれって言うけど、あっちは口を出してくる」
つまり、「空気を読むこと」が意思決定の基準になってしまっているのです。
「ルールなき現場」が混乱を生む
同じミスをしても、怒られるかどうかは相手次第。相談できるかどうかも、上司の機嫌によって変わる。そんな職場では、社員は自信を失い、次第に考えることをやめていきます。
結果、こんな考えに陥ります。
「言われたことだけやろう」
「余計なことはしない方が安全」
「自分から動くと損をする」
このようにして、組織は“指示待ち人間”を量産する構造に陥ってしまうのです。
“個別対応文化”が組織をむしばむ
「人を見て対応する」という柔軟さは、一見良さそうに思えるかもしれません。
「あの人は怒りっぽいから、丁寧に」
「この上司は細かいから事前確認を」
「部長には書面で、社長には口頭で報告」
でも、こうした対応が繰り返されると、社員はこう感じるようになります。
「誰のために、何を、どこまでやればいいのか分からない」
「“人を見る”ばかりで、仕事が進まない」
「結局、判断の基準は“忖度”しかない」
その結果、組織は属人化・不透明化・無責任化へと進んでいくのです。
「空気を読む文化」が、社員の主体性を奪う
「空気を読む」ことが求められる環境では、社員は“自分で考える力”を徐々に失っていきます。
「上司の顔色をうかがう」ことが最優先になり、
「目的や成果」は後回しになり、
「怒られないようにする」ことが行動の軸になってしまう。
こうして社員は、会社の中でしか通用しない存在になってしまうのです。
明確なルールが、社員を自由にする
ルールと聞くと、「縛られる」と感じる方も多いかもしれません。しかし本来、ルールの目的は“自由と安心”を生み出すことです。
誰が、何を、どこまで、どのようにやるのか
何を相談すべきで、何は自分で判断してよいのか
成果と評価の関係はどうなっているのか
これらが明確になっていれば、社員は迷わずに、自信を持って行動できます。
空気を読む必要はありません。判断の根拠があることで、主体的に動けるようになるのです。
「運用の仕組み」で文化は変えられる
空気で文化ができているわけではありません。
文化とは、日々の“運用の積み重ね”によって形成されるものです。
たとえば、
朝礼で「今日の判断基準」を共有する
週1で「今週の失敗や改善点」を全体で振り返る
定例会議で「成功事例」を共有する
こうした積み重ねが、「人ではなく仕組みで動く」文化を少しずつ根づかせていきます。
社員の判断力を育てる3つの原則
社員が「自分で考えて動ける」ようになるためには、次の3つが重要です。
判断の「枠」を明確にする
「この範囲は自分で判断してよい」「このときは必ず相談する」など、判断の幅を言語化します。判断の「基準」を共有する
「うちの会社は○○を最優先する」など、判断の軸が明確であれば、迷わずに行動できます。判断の「結果」を共有する
良い判断も失敗も、フィードバックを通じて次に活かす。これが判断力を育てます。
まとめ:空気ではなく、仕組みで動く組織に
「人を見て動け」は、混乱と萎縮を生む
属人的な判断が続くと、社員の成長を止める
明確なルールと判断基準が、社員の自由と安心を支える
組織文化は、「空気」ではなく「仕組み」で変えられる