社長の一声が全部を壊す? ― トップの発言と仕組みの矛盾

あなたの会社でも、こんなことは起きていませんか?

  • 時間とお金をかけて作ったルールが、気づけば形骸化

  • 属人的な判断が横行し、仕組みが運用されない

  • 社員が「結局、社長の気分次第じゃないですか…」と心の中で思っている

実はこれ、社長のたった一言が会社の仕組みを破壊してしまう典型例です。
もちろん意図的ではありません。しかし、トップの発言は想像以上に強く、そして重い。

本記事では、
「なぜ社長の一声が仕組みを壊すのか」
「どうすれば社長の言葉と仕組みを整合させられるのか」

を、現場のリアルと経営理論の両面から掘り下げます。


1. 社長の言葉は“制度より強い”という現実

仕組みは「会社全体のルール」。
一方、社長の発言は「絶対的な意思決定」。

この二つがぶつかったとき、
社員がどちらに従うかは明らかです。


● 従業員はこう考えています

  • 「ルールより社長の意向が優先に決まっている」

  • 「今日はこう言ってるけど、明日は違うかも…」

  • 「本当にこの仕組みを守る必要あるのか?」

つまり、社長の一声は会社全体の“空気”を決定する力を持つ

だからこそ、社長自身がその影響力を自覚していないと、
良い仕組みほど簡単に崩れていくのです。


2. トップの“つい言った一言”が引き起こす3つの崩壊

① 現場が混乱し、判断軸がぶれる

せっかく仕組みで「判断基準」を明確にしていても、
社長の気まぐれに見える発言が上書きしてしまう。

→ 現場は“正しい行動”が分からなくなる。


② 運用のモチベーションが下がる

「どうせ社長の一言で変わるんでしょ?」
こう思われた瞬間、社員は仕組みを守る意義を失います。

ルールが守られない最大の原因は“無意識のルール破壊”です。

こうなると、従業員は社会や顧客、部下を見ることを止めて、社内・上司の言う事を大切にする人材が育ちます。


③ 内部の“影のルール”が生まれる

正式な制度とは別に、社内にはこうした裏ルールができ始めます。

  • 「本音は社長の顔色を見ること」

  • 「仕組みより社長の言葉」

これが定着してしまうと、どんな仕組みも機能しません。


3. 壊さない社長は、実は“何を言うか”よりも“何を言わないか”を意識している

仕組みを大事にする経営者ほど、発言の影響を理解しています。


● 良い社長の共通点

  • その場の思いつきを現場に投げない

  • 「例外」の扱いを極力減らす

  • 仕組みで決めたことを、まず自分が守る

  • 現場の声を聞き、仕組みのアップデートを習慣化している

つまり、
**社長の振る舞いそのものが“運用設計の一部”**だと理解しているのです。


■ ■ 4. 社長の言葉と仕組みを整合させるための3つの実践ステップ


① “発言前の5秒”をつくる

社長の一言は会社の方針。
だからこそ、思いつきをその場で言わない習慣が大切。

一度飲み込み、こう自問してください:

  • この発言は仕組みを壊すか?

  • 運用に矛盾を生まないか?

  • 例外扱いにしていないか?

たったこれだけで、破壊の8割は防げます。


② 仕組みの変更は“プロセス”として扱う

言いたいこと、変えたいことがあるなら正式な更新フローを設定します。

現場の意見

改善案の検討

仕組みの更新

社長の承認

このプロセスを通すことで、
社長の一言が“組織の正式な改善”に昇華されます。


③ “例外対応”を減らす

例外は現場を破壊する最大の原因。
社長が例外扱いを増やすと、社員はこう解釈します:

「仕組みはあくまで“原則”なんだな」

例外を作る場合は、必ず理由と範囲を明示し、標準に戻す期限を定めましょう。

また、私の推奨としては、ルールを考える時にしっかりと組み入れることです。

事業を進める上で、理想より現実を追わなければならない場合もあるでしょう。緊急的にルールに沿わないことを実施せざるを得ない場合もあるでしょう。経営者の判断とはそういうものです。

ですので、最初から理想だけをルールにせず、実行面も含めたルール作りにする必要があります。

「仕方ないだろう」「私は柔軟に判断しているんだ」と思うのはジャッジする側の理屈です。これがOKなら、現場も「じゃあ、私たちも柔軟に対応します。」という理解をして、自由な判断と行動を後押ししてしまうことになります。

両極端なものを成立させる考えについては、以下のブログでも言及しているので、参考にして頂きたい。

【両極を併せ持つ】経営とは相いれない要素を1つにすること


■ ■ 5. 仕組みを壊さない社長は、“仕組みの守護者”である

社長自身の発言が「仕組みを活かす言葉」に変わった瞬間、
会社全体はこう変わります。

  • ルールが守られる

  • 判断軸が統一される

  • 現場が迷わなくなる

  • 会社の成長速度が上がる

社長の一声が、仕組みを壊すか育てるかの分岐点。
その自覚を持てた瞬間、
あなたの会社の仕組み化は本当の意味で動き始めます。

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