― トラブルを未然に防ぐ“運用設計” ―
■ ルールは守られる前提で作られている。しかし現場はそうではない
あなたの会社にも、立派なルールや制度が存在するはずです。
・遅刻したらこうする
・見積書は承認フローに通す
・顧客への報告は24時間以内
・年間有給は事前申請
・備品は登録して使用する
しかし現場では守られるものと、守られないものがある。
しかも、守られない理由は「制度の出来の悪さ」ではないことが多い。
ほとんどの場合、原因はもっと人間的で、もっと扱いづらいものです。
そう、 “感情”です。
■ ルールを決めても、社員は“自分の感情”で運用する
企業経営をしていると、つい見落としがちですが、
ルールは論理で作られても、人は感情で動きます。
例えばこんなシーン、ありませんか?
「忙しいから後回しでいいか」と判断した
「上司に言いにくいから報告しなかった」
「他の人もやってないし…と思って守らなかった」
「このくらいなら大丈夫だろう」と自己判断した
これらはすべて、**感情によるルールの“ねじ曲げ”**です。
経営者は「なんで守らないんだ」と感じますが、
現場は「守らない理由」を持っている。
そしてその理由は、論理ではなく感情なのです。
■ 感情がルールを歪める瞬間は“トラブルの発火点”
もっと厄介なのは、ルールがねじ曲がる瞬間には必ず トラブルの種が一緒に生まれること。
・後回しにして報告漏れが起きる
・伝えづらさでコミュニケーションが止まる
・“このくらい”の積み重ねがコンプライアンス違反につながる
・みんなが守らないので“実質無法地帯”になる
あなたの会社で起きる問題の半分は、
実際は「ルール不備」ではなく、
**“感情を無視した運用設計の不備”**です。
■ ルールは“運用の仕組み”まで作って初めて機能する
ここが重要です。
経営者がルールを作るとき、
内容(what)とフロー(how)だけ決めて満足してしまいがちです。
しかし、本当に大切なのは
“どうすれば社員が感情的に実行しやすいか”
という視点です。
つまり、ルールは作って終わりではなく、
“運用設計”までして初めて仕組みになる。
運用設計とは、簡単に言えば――
✔ 社員が「守りたくなる」「守らなければならない」状態をつくること
✔ 感情を正しく流れるようにサポートすること
です。
■ トラブルを防ぐ実践的“運用設計”3ステップ
STEP1:ルールを“納得できる理由を説明する”
多くの会社は
「このルールは必要だから守りなさい」と言います。
しかし人は、
必要性ではなく“感情で理解する生き物”です。
例えば──
「報告は24時間以内」
悪い説明:
「ルールだから」
良い説明:
「報告が遅れると、お客様の不安を増やし、信用を失います。
あなたのお客様を守りたいので、この24時間ルールを作りました」
人は、
ルールの背後の“感情的理由”を理解したとき、行動が変わる。
STEP2:迷ったときに相談しやすい“空気”を作る
ルールがねじ曲がる最大の場面は、
「例外が発生したとき」 です。
そして例外は必ず発生する。
中小企業ではなおさらです。
だから重要なのは、
例外が起きたときに“相談しやすい環境”をつくること。
相談したら怒られる
「それくらい自分で考えろ」と言われる
忙しそうで話しかけにくい
こういう職場では、
社員は“勝手に判断”します。
これがトラブルの原因になります。
逆に言えば、
相談しやすいだけでトラブルの半分は消えます。
STEP3:守れたときの“小さな承認”を仕組みにする
仕組みとは、本来“人が動きやすくするための設計”です。
だからこそ、
社員がルールを守れたときには
「やってよかった」という感情の報酬が必要です。
・「ありがとう」のひと言
・日報のコメントでプチ承認
・月1回の“良い運用紹介”
・小さな成功の共有
これらを仕組みにすることで、
社員はルールを「自分ごと化」します。
■ ルールを守らせるのではない。守られ“続ける”環境をつくる。
ルールを守らせるには一定の強制力が必要です。しかし、ルールは強制だけでは上手く動きません。精度と強制だけで動くのであれば、日々事件やもめごとが発生して警察や行政が動くことはゼロになります。しかし、実体としてそうはなっていません。
・人は感情で動く
・感情は環境に影響される
・環境は仕組みで作れる
だから、ルールが守られない会社は、
社員が悪いのではなく、
**“仕組みに感情設計が足りないだけ”**です。
仕組み化とは、
制度を作ることではなく、
“人が動く仕組みを作ること”。
その中心には、いつも
感情があります。