なぜ社員はミスを隠すのか

― 罰ではなく“信頼”で動く組織へ

はじめに

「部下を叱ると関係性が壊れてしまうのではないか」「厳しくすると心理的安全性がなくなるのではないか」――多くの経営者や管理職が抱える悩みです。

一方で、厳しさを避けてしまえば組織の基準は下がり、甘えや馴れ合いが広がっていきます。結果として、生産性は低下し、成長の機会も失われてしまう。

心理的安全性とは「何をしても許される」状態ではなく、「厳しいフィードバックを受けても関係が壊れない状態」です。本記事では、叱っても壊れない職場をつくるための「安全性と厳しさのバランス」について掘り下げます。


1. 心理的安全性と「甘やかし」は違う

心理的安全性がある職場と聞くと、のびのびと自由に振る舞える「ぬるま湯」のような環境をイメージされる方もいます。しかし、それは誤解です。

心理的安全性とは、「間違っても罰せられないから挑戦できる」という土台のこと。これは決して「間違っても放置される」「厳しさがない」という意味ではありません。

もし間違いを放置すれば、組織はすぐに基準が下がり、優秀な人材ほど離れていきます。安全性の上に「厳しさ」を重ねることで、健全な成長のサイクルが回るのです。


2. 人がミスを隠す本当の理由

社員がミスを隠すとき、それは「叱られるから」ではなく「叱られた結果、信頼を失うと感じるから」です。

  • 叱責が人格否定に感じられる

  • 他のメンバーの前で恥をかかされる

  • 一度の失敗で「もうダメな人」とラベルを貼られる

こうした体験が続くと、社員は「指摘されるくらいなら隠した方が安全だ」と学習してしまいます。

つまり、叱ること自体が問題なのではなく、叱り方とその後の関わり方が心理的安全性を壊すのです。


3. 「叱る」と「潰す」の違い

経営者が意識すべきは、叱ることと潰すことを区別することです。

  • 叱る:行動や結果に焦点を当て、改善のための具体的な指摘をすること

  • 潰す:人格や存在を否定し、相手の挑戦意欲を奪うこと

「君はダメだ」「お前には期待していない」といった言葉は、組織から挑戦の芽を摘み取ります。
一方で「今回のやり方はうまくいかなかった。次はこうしてみよう」という指摘は、相手に改善の道を残します。

叱るとは、未来への投資であり、潰すとは、未来の可能性を奪う行為です。


4. 厳しさが信頼に変わる瞬間

叱責を受けたとき、社員が「厳しいけれど、自分の成長を願ってくれている」と感じれば、それは信頼に変わります。

そのためには:

  1. 事実に基づいて指摘する(感情ではなく具体的な行動を指摘)

  2. 改善の余地を示す(次にどう行動すればよいかを伝える)

  3. 評価と叱責を分ける(人格や全体像ではなく、その場の行動に焦点をあてる)

  4. 叱った後にフォローする(「期待している」と伝え、関係を修復する)

これらを徹底することで、叱責は破壊ではなく「関係の強化」に転じます。


5. 安全性と厳しさの黄金比

心理的安全性と厳しさのバランスは、**「安心7割:緊張3割」**が理想と言われます。

  • 7割の安心 → 意見を出しやすい、挑戦しても失敗しても潰されない空気

  • 3割の緊張 → 高い基準を維持し、行動や成果に対して責任を持つ意識

安心ばかりではぬるま湯に、緊張ばかりでは恐怖政治になります。両者の同居が、成果と成長を生む組織文化を形づくります。


まとめ

叱っても壊れない職場をつくるには、心理的安全性と厳しさのバランスが不可欠です。

  • 心理的安全性は「叱られない環境」ではなく「叱られても信頼が壊れない環境」

  • 人がミスを隠すのは「叱られるから」ではなく「信頼を失うと感じるから」

  • 厳しさは潰すことではなく、改善を促す未来への投資

  • 安心7割・緊張3割の黄金比を意識することで、挑戦と成長が同居する職場になる

経営者がこの視点を持つことで、組織は「叱るたびに強くなる」職場へと進化していきます。

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