― 社員を“信用できない病”にかかった会社の共通点とは ―
「この社員、ほんとに任せて大丈夫だろうか…」
経営者であれば、一度はそんな不安を抱いたことがあるはずです。
指示通りに動かない
すぐサボる
細かく見ていないと手を抜く
報告がなくて進捗がわからない
気づけば「誰も信用できない」という気持ちが募っていきます。
一方で、社員はこう思っています。
「いちいち口を出されて、やる気がなくなる」
「どうせ任せてもらえない」
「少しでも判断を間違えると責められる」
このすれ違いの根本にあるのは、「信頼の欠如」です。
ですがこれを「人間関係の問題」だと捉えてしまうと、本質を見誤ります。
実は問題の多くは、“構造の問題”として起きているのです。
社員を信頼できない理由は、「3つの構造」にある
社員が信用できないと感じるとき、そこには往々にして次の3つの構造的な課題が潜んでいます。
1. 情報が“属人化”している
「この仕事は○○さんしかわからない」
「顧客対応は△△さんに任せっぱなし」
「業務の流れが整理されていない」
こうした状況では、仕事を任せること自体がギャンブルのようになってしまいます。
業務が“人”に依存していれば、当然のことながら不安になります。
2. フィードバックの仕組みがない
「報連相を徹底しろ」といくら言っても、社員が動かない。
それは、報連相を“文化や気合”で片付けているからです。
何を報告すればいいか不明確
報告しても、怒られるか、無反応
日報などが“提出するだけの儀式”になっている
このような状況では、社員は「報告しても意味がない」と感じてしまい、やがて報告しなくなります。
3. 成果と行動がつながっていない
「成果が出ないってことは、努力してないんだろ?」
そんなふうに決めつけていませんか?
実際には、
正しい方向で努力しているけれど時間がかかる
外部要因で成果が出ない
頑張っているけど、やり方がズレている
など、成果の裏側にはさまざまなプロセスがあります。
でもそのプロセスを見ずに「成果がすべて」と判断してしまうと、社員は何をどう頑張ればいいかわからなくなり、「言われたことだけやろう」という姿勢になっていきます。
社長の「信用できない」は、社員の「信じてもらえない」に変わる
社長は「行動が信頼できない」と感じているかもしれません。
しかし、社員の側から見れば、
「何をしても信用されない」
「任せても、どうせ後から文句を言われる」
「最終的には社長が全部やってしまう」
結果として、“信じてもらえない人材”がどんどん生まれてしまうという悪循環に陥るのです。
信頼とは「仕組み」でつくるもの
よく「社員を信じるしかない」と言われます。
でも、信じるという“気持ち”だけでは、組織は回りません。
信頼とは、あくまでも“仕組み”によってつくられるものです。
たとえば、
誰がやっても一定レベルの仕事ができる「標準化」
状況が把握できる「可視化」
小さな成功体験を積み上げる「段階設計」
安心して本音を言える「対話のルール」
こうした仕組みがあることで、ようやく「社員を信じられる環境」が整うのです。
信頼を育てるための4つの実践ポイント
では、どんな仕組みを整えればいいのでしょうか?
以下に、すぐに取り組める4つのヒントをご紹介します。
1. 「見えない仕事」を見える化する
特別なツールは必要ありません。
ExcelでもホワイトボードでもOKです。
「誰が、何を、どこまでやっているか」が見えるだけで、信頼感は大きく変わります。
2. ルールではなく「合意」をつくる
一方的なルールで縛るのではなく、
「なぜそれをやるのか」「どうやるのか」を対話することで、納得して動けるようになります。
3. 評価は「成果」だけでなく「行動」も見る
頑張っているプロセスを認めることで、社員の意欲が持続します。
「結果が出たら褒める」では遅すぎるのです。
4. ミスしても怒られない文化をつくる
「ミス=怒られる」が定着していると、社員は守りに入ります。
ミスをどう受け止め、何を学ぶかを対話することで、信頼は育ちます。
まとめ:「信頼できない社員」は、構造が生み出している
社員を信用できないのは、構造の問題かもしれない
属人化、情報の不透明性、成果偏重が信頼を壊す
信頼は“仕組み”で育てるものであり、気持ちや人柄ではつくれない
社長の“感情”ではなく、“設計”が信頼関係をつくる
次回は、「あなたの『指導』が社員をダメにしているかもしれない」というテーマで、
育てるつもりが壊してしまう“教育の構造”についてお話しします。