はじめに
プロジェクトにおいて最も重要な資源とは何か?それは「人」と「物(設備・資材・情報)」です。どんなに優れた戦略や計画があっても、適切な資源がなければプロジェクトは前に進みません。
PMBOKでは、資源マネジメント(Resource Management)を「プロジェクトに必要な人材や物理的資源を特定し、取得し、管理するプロセス」と定義しています。
本記事では、経営者が資源マネジメントの観点から、どのように自社のリソースを戦略的に配置し、最大限に活かすべきかを解説します。
プロジェクトマネジメントの要素については、下記のブログを参考にして下さい。
1. なぜ資源マネジメントが重要なのか
資源の最適活用ができていないプロジェクトには、以下のような問題が生じやすくなります:
人的リソースの偏在(誰かに業務が集中する)
スキルと役割のミスマッチ
機材や設備の無駄な重複・不足
適切な資源マネジメントは、チームの生産性を高め、納期・品質・コストのバランスを取るための土台となります。
2. 資源マネジメントの主要プロセス
PMBOKでは、資源マネジメントを以下の6つのプロセスに分けていますが、ここでは経営者に必要な視点で再構成して解説します。
2.1 必要な資源の特定
まずプロジェクトの成功に必要な「人」と「モノ」は何かを明確にします。
経営者の実践ポイント:
プロジェクトの目的から必要スキルと経験値を逆算する
使用する設備やツールのリストアップ
外部リソース(外注・パートナー)の活用可能性を検討する
2.2 人的資源の確保と配属
適切な人材を適所に配置するフェーズです。
経営者の実践ポイント:
社内外から人材を確保する体制を整える(採用・派遣・業務委託)
役割定義を明確にし、責任と権限を明文化する
コンフリクト(対立)を未然に防ぐチーム編成を意識する
2.3 チームの育成とマネジメント
人材を単なる作業リソースとしてではなく、成果を生む“能力”として捉える段階です。
経営者の実践ポイント:
定期的な1on1やフィードバックでモチベーションを維持する
プロジェクト経験を通じて人材の成長を促す
エンゲージメントの高い組織風土を醸成する
2.4 物的資源の調達と管理
設備やツール、材料などの準備と保守・利用状況の管理を行います。
経営者の実践ポイント:
購買・レンタルの最適判断を行う
複数プロジェクト間で資源の共用を可能にする仕組みを整備
過不足を常に把握できる可視化ツールを導入する
3. 経営者が意識すべき3つの資源マネジメント観点
観点1:コストと価値のバランス
人や設備を「安く」揃えるのではなく、「価値を最大化する使い方」ができているか?を常に問い直す視点が必要です。
観点2:プロジェクト横断の資源最適化
単一のプロジェクトに閉じた最適化ではなく、企業全体としてのリソース配分をマクロ視点で見ることで、生産性と柔軟性の両立が可能になります。
観点3:人材の“活用”と“育成”の両立
即戦力として活用するだけでなく、プロジェクトを人材育成の場としても機能させることで、企業の中長期的な競争力が高まります。
4. まとめ
資源マネジメントは、単なる「割り当て」の話ではなく、経営資源を戦略的に“活かす”ための技術です。
経営者自身がプロジェクト全体を俯瞰し、人的・物的資源の動きを可視化・最適化することで、複数のプロジェクトを同時に成功に導く土台が築かれます。
まずは、自社のプロジェクトにおける「誰が・何を・どれだけ使っているか?」を洗い出すことから始めてみましょう。