ITは人を楽にしない

― 自動化がもたらす“新しい働き方”

「ITを入れれば、人は楽になる」
多くの経営者が、どこかでそう期待しています。

しかし、現実はどうでしょうか。

  • ITを入れたのに、社員は忙しそう

  • 自動化したはずなのに、仕事が減らない

  • むしろ“考えること”が増えている

もし、あなたの会社でこうした違和感が起きているなら、
それは失敗ではありません。

ITは、最初から人を楽にするためのものではないからです。


自動化=作業削減、ではない

まず、はっきりさせておきましょう。

ITや自動化が得意なのは、
**「決まっていることを、迷わず、繰り返す」**ことです。

逆に言えば、

  • 判断が曖昧

  • 状況によって対応が変わる

  • 人の経験や勘に依存している

こうした仕事は、自動化できません。

それでも多くの社長は、
「自動化すれば、人手が減る」
「効率化すれば、余裕が生まれる」
と考えてしまいます。

このズレが、IT導入後の混乱を生みます。


ITが奪うのは「作業」

増えるのは「判断」

ITを入れると、確かに作業は減ります。

  • 転記しなくてよくなる

  • 集計しなくてよくなる

  • 手で確認しなくてよくなる

しかし、その代わりに確実に増えるものがあります。

判断です。

  • この数字は正しいのか

  • 想定と違う理由は何か

  • 次に手を打つべきか、様子を見るべきか

これらは、
どれだけITを入れても、
人間が引き受けるしかありません。

つまり、IT導入とは、

「考えなくていい仕事」を減らし、
「考えなければならない仕事」を前面に出す行為

なのです。


「楽にならない」のは、会社が前に進んでいる証拠

ITを入れて、
社員が「前より考えるようになった」
「判断を求められる場面が増えた」
と感じているなら、それは健全な反応です。

なぜなら、今まで、

  • 作業でごまかしていた

  • 忙しさで見えなかった

  • 個人の経験に埋もれていた

問題が、表に出てきているからです。

ITは、
仕事を減らす装置ではなく、
仕事の本質をあぶり出す装置
です。


自動化が失敗する会社の共通点

自動化がうまくいかない会社には、
ある共通点があります。

それは、

「人に任せていた曖昧さ」を、そのまま自動化しようとする

ことです。

  • 判断基準が言語化されていない

  • 標準と例外の線引きがない

  • 「ケースバイケース」が多すぎる

この状態で自動化すると、

  • 例外処理だらけになる

  • 手作業が逆に増える

  • 結局、人が付きっきりになる

結果、社長はこう言います。

「やっぱり人がいないとダメだな」

違います。
決めていないから、ダメなのです。


ITが突きつける、経営者への要求

ITは、社員よりも先に
経営者を楽にしません。

むしろ、真逆です。

  • 何を標準にするのか

  • どこまでを任せるのか

  • 何を捨てるのか

こうした判断を、
「そのうち考える」ことを許しません。

ITは冷酷です。

  • 決めたことは、決めた通りに動く

  • 決めていないことは、止まる

  • 曖昧なままの部分は、混乱として表出する

つまり、
IT導入とは「経営の棚卸し」そのものです。


“新しい働き方”とは何か

では、自動化が進んだ先にある
「新しい働き方」とは何でしょうか。

それは、

  • 作業量が減ること

  • 残業がなくなること

ではありません。

本質は、ここです。

人が「考える仕事」に集中せざるを得なくなること

  • 数字を見る

  • 仮説を立てる

  • 話し合い、決める

これは、楽ではありません。
しかし、会社が成長するためには不可欠です。


社長が覚悟すべきこと

ITを入れると、
社員は変わります。

しかし、それ以上に変わる必要があるのは、
社長自身です。

  • 現場の頑張りに頼らない

  • 忙しさを評価しない

  • 「何となく」を許さない

ITは、人を楽にはしません。
ですが、

会社を“考える組織”に変える力

は、確実に持っています。

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