はじめに
現代のプロジェクトは、自社だけで完結することは稀です。ITシステムの導入、オフィスの改装、新商品の製造など、外部ベンダーやパートナー企業との協業が当たり前になっています。
そのとき必要になるのが、「調達マネジメント」です。
PMBOKでは、調達マネジメント(Procurement Management)を「プロジェクトのニーズに応じて、外部から製品、サービス、成果物を取得するプロセス」と定義しています。
経営者にとっては、信頼できる外部リソースと、対等な関係で契約・管理するスキルが求められます。
プロジェクトマネジメントの要素については、下記のブログを参考にして下さい。
1. 調達マネジメントの重要性
品質や納期がパートナーに依存するリスクがある
契約の不備が後々のトラブルの火種となる
業者任せにすると、コストが想定以上に膨らむことがある
経営者は、単に価格を下げるだけでなく、長期的に信頼関係を築ける調達先を選び、管理する視点が重要です。
2. 調達マネジメントの4プロセス
PMBOKでは、調達マネジメントを以下の4つのプロセスに分けています。
2.1 調達マネジメント計画(Plan Procurement Management)
目的:何を外部に依頼するか、その範囲・方法・契約形態などを定める
経営者の実践ポイント:
自社内でできること/外部に任せるべきことを明確化する
契約の種類(定額契約、実費精算契約、出来高契約)を戦略的に選ぶ
選定基準を定め、業者任せにしない「判断軸」を持つ
2.2 調達の実行(Conduct Procurements)
目的:入札・選定・契約締結など、実際にベンダーを選ぶ
経営者の実践ポイント:
提案依頼書(RFP)をしっかり作り込むことで、ミスマッチを減らす
単純な価格比較だけでなく、過去実績やリスク対応力を評価する
契約交渉では、納期・成果物の定義・責任分界点を明文化する
2.3 調達のコントロール(Control Procurements)
目的:契約履行の監視、成果物の検収、課題の対応など
経営者の実践ポイント:
成果物の品質基準をあらかじめ定義しておく
ベンダー評価シートなどを使って客観的な評価を行う
問題が発生した場合の是正措置・責任分担をすぐに明らかにできる体制を
2.4 調達の終結(Close Procurements)※第6版まで
※第7版では明示的なプロセスからは外れましたが、プロジェクト完了時の契約締結処理は依然として重要です。
経営者の実践ポイント:
最終成果物の合意・検収を明文化し、後のトラブルを防止する
契約終了時に、ベンダーとの「振り返りミーティング」を行う
得られた知見を次のプロジェクト調達に活かす
3. 経営者が押さえるべき3つの視点
視点1:取引は“買う”のではなく“組む”もの
調達は価格交渉ではなく、パートナーとの価値創造の始まりです。自社と同じ目線で、プロジェクトを成功に導ける関係性づくりが求められます。
視点2:契約書は“トラブル対応マニュアル”である
契約書を単なる形式にせず、万が一トラブルが起きた時にお互いが冷静に対応できる指針とすることが大切です。
視点3:見積もりの“裏側”を読む
同じ見積額でも、内容の濃さや想定リスク、作業範囲は業者ごとに異なります。**価格だけでなく「どこまでやるか」「どうやるか」**に目を向けましょう。
まとめ
調達マネジメントは、プロジェクトの一部ではなく「成功の半分を外部と共有する行為」と言えます。
経営者は、“外注”をコスト削減手段ではなく、戦略的パートナーシップの一環と捉えることが重要です。
まずは、自社の過去の外部委託プロジェクトを振り返り、「成功した調達/失敗した調達」の違いを洗い出すことから始めてみましょう。