はじめに
プロジェクトにおいて「納期」「予算」と並び、最も重要な要素が「品質」です。成果物の品質が低ければ、どれだけスケジュール通りに進行し、予算内で完了しても、顧客や市場からの評価は得られません。
PMBOKでは、品質マネジメント(Quality Management)を「プロジェクトおよび成果物の品質を確保するための方針・目的・責任を決定し、それを実行する一連のプロセス」と定義しています。
本記事では、経営者が品質マネジメントをどのように理解し、現場に落とし込むべきかを解説します。
プロジェクトマネジメントの要素については、下記のブログを参考にして下さい。
1. 品質マネジメントの重要性
品質とは単なる「欠陥の有無」ではありません。顧客の期待を満たし、かつそれを超える価値を提供できているかが鍵になります。
品質マネジメントの欠如は次のような問題を引き起こします:
顧客クレームの増加、信頼の喪失
再作業や手戻りによるコストの増大
社内士気の低下やチームの混乱
経営者が品質に対して明確なビジョンと判断軸を持つことで、企業全体の価値基準が統一され、品質文化が醸成されます。
2. 品質マネジメントの主要プロセス
PMBOKでは、品質マネジメントを以下の3つのプロセスに分類しています。
2.1 品質マネジメント計画の策定(Plan Quality Management)
プロジェクトの品質要求事項を定め、それをどのように達成するかの計画を立てるプロセスです。
経営者の実践ポイント:
顧客・市場の期待値を明確化する
品質基準(仕様、パフォーマンス、顧客満足など)を数値で定義する
品質に対する企業としての優先順位を明示する
2.2 品質のマネジメント(Manage Quality)
計画に基づき、品質を確保するためのプロセスや業務の改善を行う段階です。品質保証(Quality Assurance)の役割を担います。
経営者の実践ポイント:
各工程における品質管理体制を整える(例:Wチェック体制、チェックリスト)
チームに品質の目的と価値を共有する
継続的改善(PDCA)の文化を組織に根付かせる
2.3 品質のコントロール(Control Quality)
成果物が定められた品質基準を満たしているかを検証し、不適合があれば修正対応を行うプロセスです。
経営者の実践ポイント:
定量的な品質評価(例:合格率、欠陥率)を導入する
問題発生時の是正措置を迅速に講じる体制を作る
顧客からのフィードバックを積極的に回収・活用する
3. 経営者が品質マネジメントで意識すべき3つの視点
視点1:顧客価値から考える品質
内部基準だけでなく、「顧客が何に価値を感じるか」を軸に品質を設計・評価することが重要です。
視点2:属人的な作業からの脱却
品質を属人的な力量に依存させず、仕組みとプロセスによって担保することが、安定した成果の鍵となります。
視点3:学びと改善を文化にする
ミスや問題を「責任追及」ではなく「改善機会」と捉え、ナレッジとして蓄積・展開する文化を醸成しましょう。
4. まとめ
品質マネジメントは、企業の信頼を構築し、ブランド価値を向上させるための土台です。経営者が主導して品質への意識を高めることで、プロジェクトだけでなく企業全体の競争力を高めることができます。
まずは、直近のプロジェクト成果物を顧客視点で評価し、「本当に期待を超える品質だったか?」を振り返ることから始めてみましょう。